書籍内容の紹介

コンサルティングバンク×キャッシュレスバンク×クラウドバンク

  • 書籍「コンサルティングバンク×キャッシュレスバンク×クラウドバンク」
    北國銀行が20年にわたり取り組んできた経営改革の軌跡と、地域金融機関としての新たな挑戦をまとめた一冊。コンサルティング・キャッシュレス・クラウドという3つの柱を軸に、地域経済の活性化と顧客本位のサービスを追求する姿勢を紹介。
    発刊:2021年
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  1. 第1章:地域金融機関の使命と北國銀行の改革

    「地域の未来を支えるには、銀行も変わらなければならない」——そんな強い思いから、北國銀行は20年にわたる経営改革を積み重ねてきました。人口減少、デジタル化、地域経済の衰退、そしてコロナ禍という逆風の中で、同銀行は「顧客本位の経営」を軸に、地域とともに進化する銀行を目指してきました。

    この章では、2018年から2024年にかけての中期経営計画「Communication × Collaboration × Innovation」のもと、銀行がどのようにして「コンサルティング」「キャッシュレス」「クラウド」という3つの柱を打ち立て、地域経済の活性化に貢献してきたかが語られます。特に印象的なのは、単なる金融サービスの提供にとどまらず、地域の課題に寄り添い、共に解決していくという姿勢が、全行員に浸透している点です。

  2. 第2章:コンサルティングバンクへの挑戦

    「銀行がコンサルティングをするなんて」と驚かれるかもしれませんが、北國銀行は2017年に専門部署を立ち上げ、行員自らがICT、人事、M&A、事業戦略などの分野で企業支援を行っています。例えば、山中漆器業界では13社が協力してクラウド型工程管理システムを開発。職人や企業間の情報共有を可能にし、業務効率を大幅に改善しました。 「銀行がコンサルティングをするなんて」と驚かれるかもしれませんが、北國銀行は2017年に専門部署を立ち上げ、行員自らがICT、人事、M&A、事業戦略などの分野で企業支援を行っています。例えば、山中漆器業界では13社が協力してクラウド型工程管理システムを開発。職人や企業間の情報共有を可能にし、業務効率を大幅に改善しました。

    また、地元スーパーのM&A支援では、2社の統合によって仕入れや物流、広告などの面でスケールメリットを生み出し、地域の流通網の再編に成功。さらに、温泉旅館の再生支援では、財務改善だけでなく、在庫管理や人材育成まで踏み込んだコンサルティングを実施し、再生ファンドを活用して経営再建を果たしました。

    これらの事例から見えてくるのは、北國銀行が「金融商品を売るためのコンサル」ではなく、「顧客の課題を解決するためのコンサル」に徹しているということ。行員の専門性と現場力を活かし、地域企業の持続的成長を支える存在としての役割を果たしています。

  3. 第3章:キャッシュレス社会の実現に向けて

    「現金がなくても安心して買い物できる社会をつくりたい」——そんな思いから、北國銀行はVisaデビットカードの普及や無料端末の提供を進めてきました。地域の商店街や温泉旅館でもタッチ決済が導入され、高齢者でも簡単に使える仕組みが整いつつあります。

    さらに、ECサイト「COREZO」では、地元産品の販売を通じて地域経済の循環を促進。カード利用によるポイント還元や、家族カード・法人カードの導入など、利用者の利便性を高める工夫も随所に見られます。法人向けには、経費精算の効率化を目的とした「北國Visa法人デビットカード」も提供されており、リアルタイムでの支出管理が可能です。

    このように、キャッシュレス化は単なる決済手段の変化ではなく、地域経済の構造を変える取り組みとして位置づけられています。

  4. 第4章:クラウドバンクの構築とDXの推進

    「銀行のシステムもクラウドで動く時代に」——北國銀行はMicrosoft Azureを活用し、インターネットバンキングを自社開発。スマホでほぼすべての取引が可能となり、リアル店舗の役割も見直されています。FIXERとの協業によるクラウドバンキングの開発では、アジャイル型開発を採用し、顧客ニーズに即応する体制を整えました。

    プロジェクトの過程では、開発文化の違いによる衝突もありましたが、相互理解と協力を深めることで、最終的には「使いやすく、見やすい」サービスとして顧客から高評価を得ています。さらに、クラウド化によってシステムコストの大幅削減とセキュリティ強化を実現。今後は法人向けクラウドバンキングの展開も予定されており、地域企業の業務効率化にも貢献していく構えです。

  5. 第5章:地域から世界へ——海外展開支援の取り組み

    北國銀行は、地域企業の海外進出を支援するため、2016年にシンガポール支店を開設しました。これは単なる拠点設置ではなく、現地での商談会開催、バイヤーとのマッチング、輸出規制や価格設定に関する説明会など、きめ細かな支援を伴う本格的な取り組みです。例えば、伝統工芸品を扱う企業には「体験型展示」を提案し、実際にバイヤーとの商談が活発化。結果として、9件の成約と12件の有望な交渉が進行中です。

    また、現地スタッフによるアフターフォローも充実しており、言語や距離の壁を乗り越えた継続的な支援が可能となっています。コロナ禍においても、オンライン商談やデジタル展示会の導入を検討するなど、柔軟な対応を続けています。こうした取り組みは、地域企業にとって初の海外販路獲得のきっかけとなり、北國銀行が単なる金融機関ではなく「地域の商社」としての役割も果たしていることを示しています。

  6. 第6章:地域総合会社としての未来像

    北國銀行は、従来の銀行業務の枠を超え、「次世代型地域総合会社」としてのビジネスモデルを構築しています。預金・貸出・決済といったコア業務に加え、法人コンサルティング、個人資産運用(IFA)、カード・リース・システム開発、ECサイト運営、人材紹介、BPO、債権回収、エクイティファンド、投資会社機能など、多機能な「第2エンジン」を展開しています。

    例えば、法人コンサルティングでは「全員コンサルティング体制」を目指し、営業店の担当者も専門的な支援を行います。個人向けには「北國おまかせNavi」を通じて資産形成をサポート。ATMの内製化やクラウドバンキングの自社開発など、システム会社機能も強化されています。さらに、地域産品を販売するECサイト「COREZO」や、地域企業への投資を行う「北國DXキャッシュレスファンド」など、地域経済の活性化に直結する取り組みも進行中です。

    このように、北國銀行は「利益の質」を重視し、変化を恐れず挑戦を続けることで、地域社会に貢献する新しい金融機関の姿を体現しています。

  7. 第7章:人材育成と組織文化の変革

    北國銀行の改革は、システムやサービスだけでなく、「人」にも及んでいます。ITプロジェクトへの挑戦を通じて、行員のマインドセットが大きく変化しました。ウォーターフォール型からアジャイル型への転換、ベンチャー企業との協業、クラウド技術の導入など、現場のメンバーは「まず動いてみる」ことの重要性を実感し、失敗から学ぶ文化が醸成されています。

    経営陣もITへの理解を深め、迅速な意思決定を支援。社内ではSlackやTeamsを活用したペーパーレス化、テレワークの推進、柔軟な勤務体系の導入など、働き方改革も進んでいます。さらに、社員の育成には外部機関との連携による研修や、実践を通じたスキル習得が重視されており、全員が「地域の未来を創るプロフェッショナル」としての意識を持つようになっています。

  8. 第8章:企業支援のライフサイクルとグループ機能

    北國銀行グループは、創業から成長、再生、廃業まで、企業のあらゆるフェーズに対応する支援体制を整えています。創業支援では、事業計画の策定や補助金申請、資金調達、ICT導入、人材採用などをサポート。成長期には、資金調達や業務改善、M&A支援を提供。再生期には、債務整理やDDS(債務株式化)、資産売却などを通じて企業の再建を支援します。

    グループ会社としては、債権回収を担う「北國債権回収」、再生支援を行う「北國マネジメント」、地域企業への投資を行う「北國DXキャッシュレスファンド」などがあり、地域金融機関としての機能を拡張しています。さらに、エクイティファンドを通じて企業の株主となり、経営支援を行うことで、単なる融資先ではなく「パートナー」としての関係を築いています。
    このように、北國銀行は「地域の課題解決と生産性向上」を使命とし、グループ全体で地域企業を支える体制を構築しています。