書籍内容の紹介
コミュニケーション×コラボレーション×イノベーション
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- 北國銀行が20年以上にわたり取り組んできた経営改革の軌跡と、地域金融機関としての新たな挑戦をまとめた一冊。単なる制度や仕組みの紹介にとどまらず、現場での実践や失敗、そしてそこから得た学びを通じて、地域とともに進化する銀行の姿を描いています。
- 発刊:2017年
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第1章:顧客本位の経営と組織改革
営業ノルマの撤廃や支店統合といった改革を進める中で、行員の意識改革にも注力。たとえば、紙の削減を目的としたペーパーレス化ではなく、「事前に議論し納得した上で電子稟議を回す」という文化改革から着手。単なる効率化ではなく、コミュニケーションの質を高めることを重視しました。
また、新本店ビルの設計では、役員室をガラス張りにして「見える化」を徹底。秘書室から全役員室が見渡せるレイアウトにすることで、風通しの良い組織文化を体現しました。こうした改革は、単なる建物の刷新ではなく、働く人の意識と行動を変える仕掛けとして機能しています。
第2章:人材育成と外部知見の導入
外資系戦略コンサルティング会社を導入し、地域金融機関としては異例の経営戦略プロジェクトを実施。「外部の人間に地域の何が分かるのか」といった社内の反発もある中で、あえて外の視点を取り入れ、経営の中身を根本から見直す取り組みを行いました。
第3章:キャッシュレス社会の実現と地域支援
iPadを活用したタブレット型レジ「Green POS」を開発・提供。小型プリンタやドロワーを組み合わせることで簡易かつ高機能なレジ環境を実現。カード決済と連携し、売上データの自動反映や在庫管理の効率化も可能にしました。
また、Visaデビットカードの普及にも注力。珠洲市のショッピングセンターでは、高齢者層にも受け入れられ、非接触決済のモデルケースとなりました。さらに、家族カードや法人カードの導入により、家庭や企業の支出管理もサポート。カード利用によるポイント還元や販促キャンペーンも展開し、加盟店・利用者・銀行の三者がWin-Winになる仕組みを構築しています。
第4章:クラウドバンキングとセキュリティ強化
クラウド上でのAI活用により、顧客の「利用環境」や「振る舞い」の異常を自動検知する仕組みを構築。インターネットバンキングの不正利用を迅速に察知する体制を整え、セキュリティと利便性の両立を図っています。
また、クラウドバンキングの開発では、従来のウォーターフォール型ではなくアジャイル型を採用。開発パートナーとの文化の違いに直面しながらも、相互理解を深めることで「使いやすく、見やすい」サービスを実現しました。さらに、クラウド化によってシステムコストの大幅削減と柔軟な機能追加が可能となり、法人向け展開も視野に入れています。
第5章:海外展開支援と地域商社機能
シンガポール支店を拠点に、地域企業の海外進出を支援。バイヤーとのマッチングやコンテナ輸送の手配まで一貫してサポートし、地域商材の販路拡大に貢献。たとえば、伝統工芸品を扱う企業には「体験型展示」を提案し、実際に商談が活発化。9件の成約と12件の有望な交渉が進行中です。
また、現地スタッフによるアフターフォローも充実しており、言語や距離の壁を越えた継続的な支援が可能。コロナ禍でもオンライン商談やデジタル展示会を導入し、柔軟な対応を続けています。北國銀行は単なる金融機関ではなく、「地域の商社」としての役割を果たしています。
第6章:企業支援のライフサイクル対応
製造業E社の再生支援では、社員100人と1ヶ月かけて面談を実施。人員削減で疲弊していた組織の空気を感じ取り、「社員の心が離れたら倒産もあり得る」との危機感から、信頼関係の再構築を最優先に据えました。
また、小売業C社では、営業日誌が紙ベース、スケジュール管理がExcel、営業進捗の共有が不十分といった課題が山積。北國銀行は社長との面談を通じて、全社的な業務効率化と生産性向上のプロジェクトを立ち上げ、部門ごとの課題を整理しながら改善を進めました。
第7章:ICT活用と業務改革
ICT導入支援では、単なるツール提供にとどまらず、会議や打ち合わせのあり方を抜本的に見直すところからスタート。たとえば、社内コミュニケーションの改善依頼に対しては、組織体制や権限集中の問題まで掘り下げ、グループウェア導入ではなく「組織人事戦略の再構築支援」へと発展させるなど、課題の本質に迫る支援を行っています。
さらに、病院経営の改善支援では、医療機器のリース提案を通じて金利競争を回避し、資金調達の多様化を実現。ICTを活用した業務効率化と意思決定の迅速化を両立させることで、現場の負担軽減と経営の健全化を同時に進めています。